【開発日誌】専門家の忠告を無視して失敗。コスト度外視の「シリコン化」と、ドイツの「グラフモトリク」研究。
明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、年末年始に「ペンの開発はどうなっていますか?」という熱いお問い合わせを多数いただきました。 そこで新年最初のブログは、現在の開発状況と、私の「痛恨のミス(失敗談)」についてお話しします。
■ 2つのプロジェクトを回す「改善のサイクル」
まず、私がどのように開発を進めているのか、頭の中を整理してみました。 実は今、こちらの図のように2つのプロジェクトを同時進行させ、グルグルと回しています。

① 姉妹の持ち方矯正プロジェクト
娘たちの癖を観察し、「なぜそうなるのか?」「どうすれば直るのか?」という指導法や理論を研究します。
② 魔法のペン開発プロジェクト
①で得た「気付き」を、試作品に落とし込みます。
完成した試作品を娘たちに使わせて(①へ戻る)、また改善点を見つけて作り直す(②へ戻る)。 このサイクルを繰り返すことで、理論に基づいた「本当に効果のあるペン」を目指しています。
今日は、このサイクルの中で起きた「専門家との対立」と、そこから生まれた「新たな挑戦」について告白します。
■ 専門家・伊藤さんとの「13mm vs 11mm」論争
ペンの設計段階でのことです。 私は海外の持ち方矯正事情を徹底的にリサーチしていました。

そこで見つけた、海外で人気の高い矯正ペンの太さが「13mm」だったのです。
「これだ! 世界基準は13mmなんだ!」 そう確信した私は、開発会社に「13mmでお願いします」と伝えました。
しかし、人間工学の専門家である伊藤さんは首を横に振りました。 「13mmは太すぎます。日本人の子供の手なら、経験上『11mm』がベストです」
伊藤さんはその道のプロ。でも、私も譲れませんでした。 「いや、でも海外の実績がありますから!」 「子供が握りやすいのは太い方です!」
私たちは何度も議論を重ねましたが、最後は私が押し切る形で、 「私のわがまま」で13mmの試作品を出力することになったのです。
■ 届いた試作品を握った瞬間…
数日後、完成した試作品が届きました。 ワクワクしながら箱を開け、手に取った瞬間。
「……あ、伊藤さんが正しい。」
一瞬で分かりました。 大人の私でも「ちょっと太いな」と感じるサイズ感。 子供の小さな手には、まるで丸太のようでした。

私の完敗です。 海外のデータよりも、目の前の専門家の経験値の方が、はるかに正しかった。 すぐに伊藤さんに電話して、「すみませんでした!次は11mmにします!」と謝りました(笑)。
■ 太さを直せば解決…ではなかった
こうして、ペンの太さは「11mm」に修正することになりました。 しかし、ここからが本番です。
「姉妹の持ち方矯正プロジェクト(観察)」を進める中で、 単に太さを変えるだけでは解決できない「根深い課題」が見えてきたのです。
それが、以下の3つの壁です。
■ 壁①:矯正グッズを外すと元通り
弊社で販売している「サカナの矯正グッズ」をはじめ、多くの製品は装着している間は正しい持ち方になります。 しかし、「外すと元通りになってしまう」という課題がありました。
道具がないと維持できない、いわば「補助輪」の状態です。
★開発への反映 対策はシンプルです。「継続的に使用すること」。 いちいち付け外しするのではなく、ペンそのものに矯正機能が内蔵されていれば、子供は無意識に使い続けられます。 当初の計画通り、「矯正機能内蔵型ペン」を目指します。
■ 壁②:指は直っても「角度」が直らない
次に気付いたのが、「鉛筆の角度」です。 指の配置が綺麗になっても、鉛筆が机に対して垂直に立ってしまう「高層ビル持ち」は直りませんでした。
「60度に寝かせてね」と口で言っても、子供にはその「60度」という感覚がピンときていない様子。
★開発への反映:斜めカットキャップ
そこで、ペンのキャップ(底面)をあえて「斜め」にカットすることにしました。 机に置いたときや書くときに、この底面がガイドとなり、最適な60度を体感できる仕組みです。

■ 壁③:滑って「イナズマ指」に…
そして最大の誤算がこれです。試作品を持たせたところ、今度は人差し指の第一関節が反り返る「イナズマ指」になってしまったのです!

原因を観察して分かりました。 試作段階で使用していた「アルミ製の持ち手」が、ツルツル滑るのです。
滑り落ちないように無意識に強く握りしめるため、弱い関節に負荷がかかり、反り返っていたのです。
★開発への反映:シリコン製グリップの採用
これを防ぐには、別パーツとして「シリコングリップ(ミゾ付き)」を採用することにしました。
シリコンのグリップ力があれば、軽く添えるだけでペンは安定します。 結果、イナズマ指を防止できるはずです。
もちろん、素材を変えて別パーツにすることで、製造コストは跳ね上がります。 しかし、私は初回のブログで宣言しました。 「コストよりも、実効性を優先する」と。
中途半端なものは作りません。 子供たちの指を本気で守るために、ここはお金をかけます。
■ もう一つの挑戦:ドイツの「グラフモトリク」
そして今、私はペンの開発と並行して、ある研究を始めました。
みなさんは、「グラフモトリク(Graphomotorik)」という言葉をご存知でしょうか? 日本語では「書字運動能力」と訳される、ドイツの専門的な研究分野です。
ドイツでは、文字を書くための「手や指の動き」が体系化されており、子供の発達に合わせた指導法が確立されています。 私は現在、ドイツから専門書籍を取り寄せて、徹底的にこのグラフモトリクを研究しています。
そして、その研究成果を活かして…… まほうのドリルシリーズの新作として、運筆バージョンを開発することにしました!
最高のペンと、 グラフモトリクに基づいたまほうのドリル。
この両輪で、子供たちの「書く力」を一生モノにしてみせます。 研究の成果も、またブログでシェアしますね!